皆さんに伝えたい「情報」の大切さ
「情報を制する者が医学部を制す」
医学部で5年間過ごした私は、自信を持ってそう言えます。
はじめまして、私は某国公立医学部に通う新6年のスチューデントドクターSと申します。今月から毎月1回、このサイトをご覧の医学生とその親御さんに向けて、私の経験を交えながら主に医学部での学習についてのコラムを連載していきます。
留年しないための試験勉強の方法やCBT・OSCEの対策、ストレート卒業、医師国家試験などについて連載していきたいと考えておりますので、ぜひ毎月読んでいただき、一緒に試験合格、進級、卒業に向けて頑張っていきましょう。
医学部で戦っていくために必要なエッセンス
さて冒頭で「情報を制する者が医学部を制す」と言いましたが、現役医学生の皆さんはこれを聞いてどう思いましたでしょうか。納得していただけた方は日頃より医学部において正しい勉強法が出来ているのではと思います。あまりピンと来なかった方もいるかと思いますが、大丈夫です。安心してください。今日からあなたに医学部で戦っていくために必要なエッセンスをお伝えしていきます。
まず結論からお話します。なぜ医学部において情報が大事なのかというと、同級生と同じ勉強方法で、同じだけ勉強すれば大抵の方は難なく試験に合格することができるからです。皆さんは少なくとも医師になることを志望して医学部入試という狭き門を通過することができた成功者の1人であり、同級生とは同じような学力をもっているのです。それなのになぜ試験に合格できなかったり、留年してしまったりする人がいるのでしょうか。
その答えが、その人が情報を十分に手に入れることができていなかったということになるでしょう。勉強不足で試験に合格できなかったということがあったとすると、周りの人が試験勉強を始める時期についての情報が足りなかったということになりますし、勉強したのに全くできなかったという時には、他の同級生が持っていた過去問をよくよく見たら出題されていた問題があったということもよくあることです。
医学というのは私たち医学生が完璧に理解するのは当然不可能な学問です。そのためただ闇雲に試験勉強をするのではなく、情報を集めながら勉強を進めることが試験突破の鍵になってきます。試験勉強の具体的な方法については次回以降のコラムでご紹介しますので、ご覧いただけると今まで以上に試験合格が簡単に感じられるようになると思います。
次に、入学から卒業までの医学部生活の全体を俯瞰して見て、今皆さんが学校でやっていることがどのように活きてくるのか、いつが大変な時期であるのかがなどについてお話ししていきたいと思います。皆さんも身近な先輩に「〇年生のこの時期は忙しい」とか「◯◯のテストは簡単だから勉強しなくてもいい」といったアドバイスをもらったことがあるかと思います。もちろんその先輩の言うことの半分は合っていると思います。
しかし私の体験上、医学部の勉強は後々になって活きてくると感じることが多々あります。先を見据えながら目の前のことに取り組むということは非常に大切です。
医学部6年間の流れ
医学部は6年間ありますが、ここでは大きく分けて①1.2年生、②3.4年生、③5.6年生の三つのくくりでお話していきます。
医学部 1 〜 2 年生について
医師になることを志して医学部に入ってからの2年間は主に教養科目、基礎医学、解剖実習を中心に学んでいきます。まず多くの人が医学部の試験で悩まされるのが基礎医学の試験でしょう。膨大なテスト範囲、短期間で多くの科目をこなす厳しさ、初学では正しく理解することが難しい内容などたくさんの悩まされる理由があります。
しかしながらここで辛抱強く一科目一科目勉強し続けることが後の臨床医学や臨床実習に活きてきます。患者さんの病態や治療法を根本から理解するには基礎医学の知識が必要になることが非常に多いです。基礎医学は勉強しながら「こんなこと覚えて何になるんだ…」と思うことも多々ありますが、とりあえず目の前のテストに集中することが数年後のあなたのためになると思います。基礎医学の詳しい勉強方法については今後のコラムでお伝えしていきたいと考えています。
医学部 3 〜 4 年生について
医学部での生活にも慣れたこの頃には、ついに臨床医学について学びます。基礎医学の辛い試験を乗り越えた医学生であれば、臨床で実際に必要な臨床医学は比較的モチベーション高く勉強に励むことができると思います。大きな関門は全国の4年生が受験し、夏から秋にかけて行われるCBTとOSCE(オスキー)の二つの試験です。
この二つの試験は臨床実習開始前に一定の能力があるかどうかを問われる試験であり、CBTはコンピュータを用いた多肢選択筆記試験、OSCEは技能や態度を外部試験委員によって評価される客観的臨床能力試験です。CBT、OSCEは共に十分な準備が必要であるため、早い段階から準備していく必要があります。CBT、 OSCEについては次回のコラムで深くお話ししていきますので、新4年生以下の方はぜひ目を通してCBTとOSCEについての情報を手に入れましょう。
医学部 5 〜 6 年生について
CBT、OSCEを合格するといよいよ臨床実習、通称ポリクリが始まります。ポリクリとはドイツ語のPoliklinikが由来とされており、医学生の臨床実習のことを指します。大学病院にて全ての診療科を回り、実際の医療現場を見るとともに将来の進路について考える期間となります。
実習のための勉強をしながら、並行して国試の勉強を進めていくという日常となります。コツコツ勉強している人は多く、気づいた時には同級生と大きく差がついているということもあるので、実習の隙間時間で勉強していくことが大切になります。また5年生からは初期研修をする病院を決めるために長期休みなどを利用して病院見学を行います。いわゆる医学生の就職活動です。医学部に入った際に「部活には入ったほうがいいよ」と先輩に言われると思いますが、この就活の時に部活で得た縦のつながりや人間関係は非常に活きてきます。
そして最終学年となる6年生になると卒業試験が始まり、臨床実習が終わると臨床研修開始時に必要な臨床能力を有することを確認する臨床実習後OSCE(Post-CC OSCE)や春からの初期研修先を決めるためのマッチングが行われます。そして2月には医師国家試験を受験し、合格すると晴れて医師として働き始めることができるようになります。
まとめ
ざっくりと医学部の6年間を説明しましたが、流れを掴むことはできたでしょうか。今回は大まかにしか説明することができなかったので、今後はそれぞれの内容を深掘りしていきます。ぜひ毎月読んでいただき、少しでも皆さんの学生生活に役立てていただければと思います。それではまた来月お会いしましょう。